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名古屋高等裁判所 昭和54年(ネ)417号 判決

控訴人

土屋直久

右訴訟代理人

竹下伝吉

被控訴人

水野孝芳

右訴訟代理人

山田利輔

主文

原判決を取消す。

債権者土屋直久、債務者瀬戸つや間の名古屋地方裁判所昭和五〇年(ケ)第一九四号不動産競売事件について、昭和五三年一〇月一六日作成された配当表のうち、被控訴人に対する配当部分を取消し、新しい配当表の作成を命ずる。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

請求原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。

〈証拠〉によれば、被控訴人が瀬戸つやに対し、昭和五二年八月一日金四〇〇万円、同五一年六月二四日金二五〇万円を貸付けたほか、同四八年ごろから同女の生活費、住宅建築資金、入院費用等に使用するため金一五〇万円を貸付け、合計金八〇〇万円の貸金債権を有し、これを被担保債権とし昭和五三年六月一九日受付で原判決別紙物件目録(三)の土地について被控訴人のために抵当権設定登記を経由した事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。

そこで、被控訴人の右債権に対する配当について検討するに、被控訴人の右債権を被担保債権とする右抵当権設定登記がなされたのは本件競売申立の登記がなされた後であるから、被控訴人の抵当権は差押による処分禁止に反した抵当権である。従つて、被控訴人は競売申立債権者である控訴人に対して抵当権者としての権利を主張することはできず、被控訴人は本件競売手続においては一般債権者として扱われるべきものである。すなわち、被控訴人は配当要求の申立をせずして当然に配当要求債権者として扱われるものではないから、所定の期日までに配当要求をしない限り配当に加わることを得ないのである(ちなみに、利害関係人である「登記簿に登記した不動産上の権利者」は配当要求の申立がなくても当然配当要求債権者として扱われるが、被控訴人の如き競売申立人登記後に登記された抵当権者は「不動産上の権利者として其の権利を証明したる」利害関係人に該当するもので、同一には論じられない。)。被控訴人が配当要求をしていないことは被控訴人の明らかに争わないところであるからこれを自白したものとみなす(ちなみに、任意競売においては執行力ある正本によらない配当要求は許されないと解するのが相当である。)。

そうすると、被控訴人には本件競売手続において配当を受ける権利はなく、名古屋地方裁判所が昭和五三年一〇月一六日になした被控訴人に対しその債権のうち金三一九万七九九四円を配当する旨の記載ある配当表の作成は違法というべく、右配当表のうち、被控訴人に対する配当部分は取消されるべきものであり、執行裁判所は新しい配当表を作成しなければならない。

よつて、控訴人の本訴請求は認容することとし、これと異なる原判決は取消されるべく、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(村上悦雄 小島裕史 春日民雄)

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